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知って得する病気の話_知っていますか?がん検診について(腫瘍内科)

[2020年4月2日]

ID:558

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知って得する病気の話

がん検診について

竹治 智(腫瘍内科)

【がん検診について】

 我が国においてがんは、昭和 56(1981)年より死因の第1位であり、生涯のうちに約2人に1人が罹患すると推計されています。がんは、進行すれば命に係わる怖い病気です。がんを早期に発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡を減少させることを目的として、がん検診が行われています。
 がん検診には、公共的な予防対策として実施される対策型検診と、人間ドックのような任意型検診があります。対策型検診としては、市区町村が行う住民検診が該当します。がん検診の有効性は、がんによる死亡率の減少効果で評価されます。死亡率の減少効果が科学的に示され有効性が確立し、かつ、受けることの利益が不利益を上回ることが、住民検診のような対策型のがん検診の基本条件です。
 我が国で住民検診として行われているのは、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんのがん検診です。我が国における臓器別のがん死亡者数の第1位は肺がん、第2位は大腸がん、第3位は胃がんであり、女性において乳がんと子宮頸がんはそれぞれ、第5位と第12位です。がん検診で発見されたがんは、外来で発見されるがんに比して早期がんの割合が多く、生存率も高いことが示されています。したがって、がん検診を定期的にきちんと受け、必要に応じて精密検査を受けることが、がんに命を奪われないために重要です。

がん検診受診率(厚生労働省平成28年 国民生活基礎調査より)


 厚生労働省が行っている国民生活基礎調査による3年毎のがん検診の受診率は改善しつつありますが、それでも50%に達していないのが現状です。そこで、より積極的にがん検診を受けていただくために,各がん検診の死亡率減少効果などについてご説明します。


【胃がん】

胃X線検査、胃内視鏡検査はいずれも、死亡率減少効果を示す相応な証拠があり、対策型検診および任意型検診として推奨されています。韓国で施行された研究において、胃内視鏡検診の受診により、非受診者に比べて胃がん死亡率が47%減少したことが報告されています。
 ペプシノゲン法、ヘリコバクターピロリ抗体あるいはその併用法は、現時点では、死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分とされています。しかし、ピロリ菌感染者の胃がん発生リスクは非感染者の10倍との報告や、胃がん患者の99%がピロリ菌感染者であったとの報告があります。ピロリ菌は胃がん発生の大きなリスク要因と考えられ、ピロリ菌の除菌が強く勧められます。
*有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン 2014年度版 より


【大腸がん】
 
便潜血検査による大腸がんの死亡率減少効果は国内外で広く証明されています。国内の研究において、便潜血検査を1年以内に受けた場合の死亡率減少効果は60%、2年以内、3年以内でもそれぞれ、59%、52%の死亡減少効果が示されており、対策型検診として推奨されています。全大腸内視鏡検査や注腸X線検査についても、それぞれ死亡率減少効果が示され、かつ、便潜血検査よりも感度が高いことが知られています。しかし、全大腸内視鏡検査や注腸X線検査は前処置が必要であり、検査に伴う出血や穿孔などの偶発症の危険性もあることから、対策型検診としては推奨されていません。
*有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン より


【肺がん】
 肺がん検診は、50歳以上で喫煙係数(1日平均喫煙本数×喫煙年数)が600以上の喫煙者を高危険群として、非高危険群に対しては胸部X線検査が、高危険群に対しては胸部X線検査と喀痰細胞診併用法が推奨されています。これを毎年受けることによる肺がん死亡減少効果は44%とされています。また、肺がん患者の5年生存率は、検診外で発見された方が17%程度であるのに対し、検診で発見された方は39~55%と有意に良い結果となっています。
*有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン より


【乳がん】
 
40~74歳を対象としたマンモグラフィのみの検診では、25%の死亡率減少効果が示されています。また、40~65歳を対象とした試験において、マンモグラフィ2方向と視触診の併用法を毎年実施することにより、全年齢で13%の死亡率減少効果が示されています。一方、40歳未満は乳がん罹患率は低く、現時点では死亡率減少効果は明らかではありません。また、視触診単独法、超音波検査(単独法。マンモグラフィ併用法)については、まだ確定的な結果が得られておらず、推奨されていません。
*有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン2013年度版 より


【子宮頸がん】
 
医師などが直視下に施行する子宮頸部擦過細胞診による死亡率減少効果の検討は、海外、および、本邦で行われています。本邦における研究では、子宮頸がん検診による死亡率減少効果が58.9%であったと報告されています。また、進行した浸潤がんに罹るリスクも84%減少したとの報告もあります。
*有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン(2009年) より


【最後に】
 
このように、住民検診として行われているがん検診は、科学的な根拠に基づいて施行されています。がんにより命を失うことのないよう、ご家族やご近所さんをお誘い合わせの上、がん検診を正しく受診していただければと願っています。


がん検診ガイドライン 推奨のまとめ

科学的根拠に基づくがん検診推進のページhttp://canscreen.ncc.go.jp/guideline/matome.htmlより改編