知って得する病気の話_顎変形症のお話(歯科口腔外科)
[2017年8月15日]
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顎変形のお話
みなさんは、顎変形症と言われてどのような病気かイメージすることができますか?
普段の生活でよく言われる言葉として、下あごが前方に出ている受け口やあごのしゃくれ、もしくは上あごが著しく突出している出っ歯などがあります。
顎変形症とは歯科矯正治療で使われる病名になりますが、単純に歯列不正や噛み合わせが悪いだけでは顎変形症と言いません。歯や歯列の変形と土台である顎の骨の変形が合わさり初めて顎変形症と診断されます。
顎変形症は噛み合わせや顎の骨の形の異常の話かと思うかもしれませんが、それだけでなく下あごが小さい人では空気の通り道も狭くなり、寝ているときには大きないびきをかき、睡眠時無呼吸症候群の原因となることもあります。
このように顎変形症とは、顔の骨のゆがみが問題となって、咬み合わせに異常をきたした状態です。審美的な問題や、うまく咬めなかったりする機能的な問題など両方に問題があると判断された場合にこのように診断されます。
この文章を読んで、咬み合わせも悪く顔のゆがみが気になっているかたは一度かかりつけ歯科医院で相談してみてはどうでしょうか。矯正を専門にされていない先生の場合は矯正専門で育成医療機関の認可を受けた歯科医院に紹介されます。歯科矯正を専門にしている医院にて顎変形症と診断されたら、健康保険の適応になります。
顎変形症の原因
顎変形症の発生には遺伝的な要素が強いと言われていますが、ほとんどは原因不明です。指しゃぶりや舌の突出癖なども発生要因とする説もあります。多くはあごの成長のアンバランスによるものと考えられ、小児期では異常に気付かず、思春期のあごが急成長する時期に症状が明らかとなります。
1.遺伝的要因
顎変形症の原因の1つに遺伝的要因があります。下顎前突症は欧米人に約1%程度現れる顎変形症です。下顎前突症は「ハプスブルク家のあご」とも呼ばれ、血族結婚の多いことで知られるオーストリア王家であるハプスブルク家に家族性の特徴としてみられ、骨格性下顎前突症は遺伝的な要因が大きく関与していることがうかがえます。
2.口呼吸、舌癖、おしゃぶりなど
原因の1つとして挙げられるのが幼児期の「指しゃぶり」です。乳児期の指しゃぶりは、成長にとって「良い」と言われていますが、3歳を過ぎて続けていたり、激しく指しゃぶりを行うということは顎変形症になりやすいといわれています。
3.外傷や腫瘍のどの要因
成長期にあごを強く打つことやあごの中に病気があることによって、あごの成長のバランスが崩れ顔が左右にズレて成長することもあります。
顎変形症の治療
歯科口腔外科と矯正歯科と連携をとりながら治療法を決定します。治療の目的は咬み合わせと顔貌の両者を改善することにあります。したがって、どの位置にあごを移動すれば、最も良い咬み合わせと顔貌が得られるかを検討します。そして、手術を受ける前に矯正歯科で術前矯正を行います。これは顎の手術をおこなった時によいかみ合わせになるように調整するためです。そのため手術前では不安定なかみ合わせになります。 術前矯正ののちに入院の上、全身麻酔で顎変形手術を行います。入院期間はおおよそ1週間から2週間です。当院では日本大学歯学部口腔外科の外木守雄教授のご指導のもと、総合的に判断をしており、良い治療結果を得るために上下顎の骨切りを行うことを標準治療としています。下顎のみの治療と比べて、術後の後戻りを少なくすることができるうえに、顔面非対称などの、より変形の大きな症例でも対応できます。
手術は基本的に口の中から行いますので、顔の表面に傷が残ることはありません。顎の骨を切って移動させ、かみ合わせや左右のバランスが整う位置に骨接合材(骨をとめるネジやプレート)で固定します。
手術が終わると、上の歯と下の歯に輪ゴムをかけてかみ合わせがいい位置にくるように誘導をします。退院前には患者さん自身で食事の時に取り外しができるようになります。 術後は数ヶ月にわたり、誘導を続けます。
手術後の予後
手術などの治療後は一定の期間にわたり経過を観察します。そのため、治療が完了した後も通院が必要となることがほとんどです。また、食事や運動など、日常生活での注意事項も合わせて指導していきます。
当院では他院での顎変形症手術後の顎関節症に対して世界的権威である村上賢一郎先生のご指導のもとに治療を行っています。
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