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脊椎センター(整形外科)

[2023年8月28日]

ID:713

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脊椎センター

診療の基本方針

 日本人の痛みで困っている部位の上位に腰の痛み、首・肩の痛みがあります。
整形外科診療においても多くの患者さんが腰痛・頸肩部の治療を受けに来院されています。昨年まで当院では脊椎の手術を年間100~110件程度実施してきました。
しかし、超高齢化社会の到来により、脊椎疾患の患者数は増加の一途をたどっています。手術を希望される患者さんの増加とその要望にお応えするため、2023 年 4 月に脊椎センターを開設いたしました。
 今までよりも一層他の医療機関との地域連携を強化し、高度で安心・安全な手術治療を実施していきたいと考えています。

小川 貴大(整形外科)

 近年は高齢化社会が到来し、骨や関節、筋肉など運動器疾患を扱う整形外科の患者様も増加しており、特に自立での活動が困難になっている方が増えております。
 運動器疾患の中でも特にせぼね(脊椎)は変性をきたしやすくさまざまな症状を引き起こします。主に腰痛や頸部痛、手足の痛みや痺れ、運動障害を生じます。こうしたさまざまな症状に対する脊椎についての専門的な診察や検査が必要となるため、当院では2020年より脊椎外来(堀医師、小川医師が担当)を開いております。脊椎疾患が疑われる患者様は脊椎外来にて診察を行い、レントゲン、MRI、CT検査、骨密度検査などを行い診断していきます。

当科で扱う主な疾患

腰椎椎間板ヘルニア

 脊椎の間にある、骨と骨をつなぎとめる組織を椎間板といい、クッションの役割をしております。その一部が変性をきたし、飛び出すことにより神経を圧迫した状態です。この神経の圧迫に伴い腰の神経が炎症を起こし、腰やおしりから足にかけての痛み、しびれを生じます。腰椎椎間板ヘルニアが生じてから時間が経過すると足の筋力低下や尿が頻回に出たり、残尿感があっても出なくなったり(排尿障害)することがあります。これらは時間経過に伴い神経が痛み治療に反応しにくくなってしまいます。

腰部脊柱管狭窄症

 脊柱管というのは脊椎や椎間板、靭帯に囲まれた脊髄(神経の集まり)の通り道のことを言います。これらが加齢とともに変化し、神経の通り道が狭くなり神経の血流が低下するために症状をきたします。これを腰部脊柱管狭窄症といいます。主な症状は歩くと足の痛み、痺れが生じ歩行困難となる(間欠性跛行)や排尿排便障害があります。安静時には症状がないことが多いですが、進行すると安静時にも症状が現れてきて足の痛みから動けなくなることがあります。

頚椎症性脊髄症、頚椎椎間板ヘルニア

 加齢により首の骨(頚椎)や椎間板に変形が生じ脊髄の通り道や神経根の圧迫が生じます。それに伴い手指の動かしにくさ(箸が使えない、ボタンがかけられない)や痺れ、歩行障害(スムーズに脚が運べない)、排尿障害が出現します。神経の圧迫が強い場合は上下肢の筋力低下、上肢の疼痛が出現します。

脊椎圧迫骨折、脊椎偽関節症

 人間の体は背骨によって支えられており、この支えがなければ立つことや歩くことも困難になってしまいます。骨粗鬆症などにより骨が脆くなると、体の重みに耐えられず、背骨がつぶれるようにして骨折してしまいます。これを脊椎椎体骨折または圧迫骨折といいます。原因としては転倒し尻もちをついた、高いところから飛び降りたなどが多いですが、何も外傷がなくても知らない間に骨折していることがあります。脊椎圧迫骨折の主な症状としては寝返り時や起き上がった際の背中の激しい痛みが多いです。またこの圧迫骨折に続発するものとして椎体骨折偽関節という病態があります。これは骨折した部位が骨癒合せずに骨の中が空洞になり骨折部で動いている状態です。コルセット加療など適切な治療を受けた場合でも生じることがあり、圧迫骨折の放置例ではより高率に起こります。本来動かない部位が動くことにより腰痛が持続、神経の圧迫による下肢の麻痺、排尿障害が生じることがあります。

治療について

 首の痛みや腰痛にはカラーやコルセットによる装具療法、手足の痺れ、痛みなどには消炎鎮痛剤、ビタミン剤などの内服といった保存治療を行います。
しかしながらこういった保存治療を行っても取れない痛みや、手の使いにくさや歩行困難、排尿排便障害などが出現し症状が進行性の場合は手術加療が必要となります。下記に当院での最小侵襲の手術加療をご紹介します。

当院での脊椎疾患に対する最小侵襲手術

1. 腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡手術

 当院では腰椎椎間板ヘルニアに対して内視鏡手術を導入しています。MED(MicroEndoscopic Discectomy)法と呼ばれ、2cm程の皮膚切開で脊髄神経の圧迫を取り除くことができる新しい治療法です。従来法より術後の痛みがより少なく、術後数日で退院が可能です。

2.腰部脊柱管狭窄症に対する内視鏡下腰椎手術

 腰部後方に皮膚切開を加え内視鏡下に腰の骨をハイスピードドリルで削り神経の圧迫を取ります。神経の圧迫が1か所であれば約2.5cmの皮膚切開で手術を行ってます。術後の腰痛も少なく10日間程度の入院で退院できる様に努めております。脊髄の圧迫の箇所が多い方や同部位の再手術の患者様は顕微鏡で手術を行うこともあります。

3.頚髄症に対する頚椎手術

 頚部の後方に約3cmの皮膚切開を加えます。顕微鏡下に首の骨に溝を掘り、神経の通り道を拡大して神経の圧迫を取ります。小さい傷で手術を行うので術前の散髪が不要であり、術後カラーによる固定期間も入院中のみ行います。術後の痛みが小さいため1週間程度で退院できる患者様が多いです。

4.脊柱変形に対するOLIF、インストゥルメンテーション手術

 OLIF(Oblique lumber Interbody Fusion)という低侵襲手術を行っております。腰部側腹部に約5cmの皮膚切開を加え椎間板内に人工の骨やインプラントの挿入する手技です。その後腰部から経皮的に固定術を行います。この手術の最大の利点は神経を直接に触ることなく神経の圧迫が解除できることや従来法と比べ筋肉へのダメージと術中出血が著しく少ないことです。脊柱変形に対してもこのシステムを使用しており、従来法より低侵襲に変形の矯正を行うことができるようになりました。

5. 脊椎圧迫骨折に対するBKP法(Baloon Kypoplasty)

BKP法(Baloon Kypoplasty)は脊椎圧迫骨折に対する手術の名称です。日本語では経皮的椎体形成術といいます。全身麻酔下に背中に約5mmの切開を2箇所行い、潰れた背骨の中に風船を入れ、椎体中で風船を膨らませ、骨の中に空洞をつくります。その空洞内に骨セメントを充填して、背骨の安定性を修復します。手術は30分程で終了し、ほとんど出血もなく高齢者の方でも安心して受けることができる手術です。術直後から圧迫骨折による疼痛が軽減し、歩行可能になる患者さんもおられます。

当院の安全性への取り組み

 脊椎の手術と聞くと神経を触るため危険である、侵襲が大きく痛みが強い手術と思われている方が大変多くみえるかと存じ上げます。
 当院では安全性への取り組みとして術中脊髄モニタリング、手術用顕微鏡、ナビゲーションシステム、内視鏡などの小切開で手術を行うための手術器具を導入し安全かつ低侵襲な手術治療を心がけております。高齢者や重度な持病がある患者様は術後ICUでの徹底した管理を行ってます。当院はICU医師が常に院内待機しており急な病状変化に対しても迅速に対応できる診療体制が整っております。

ナビゲーションシステム使用

さいごに

 脊椎疾患により生活に支障が生じている方や脊椎疾患を疑う症状のある方がみえればかかりつけ医に相談し当院への受診を希望してください。今後も皆様のお力になれるように尽力しますので何卒よろしくお願い申し上げます。