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知って得する病気の話_糖尿病について(糖尿病代謝内科)

[2020年8月4日]

ID:673

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知って得する病気の話

糖尿病について

黒江 彰(糖尿病代謝内科)

糖尿病がもたらす主な疾患
 糖尿病とは血糖値(血液中のブドウ糖の量)が慢性的に高い代謝疾患の総称です。戦後まもない頃の糖尿病患者さんは多くて数十万人でしたが、現在では1000万人まで増加し予備軍を含めると2000万人と推定されています。血糖値の高い状態が続くと、体中の血管や内臓の細胞が少しずつ障害され、気がついた時には視力や腎機能の低下、手足のしびれなどが起こります。さらに進行すると脳梗塞、足の壊疽(えそ)、人工透析にまで発展し命の危険にさらされます。


糖尿病の主な原因は内臓脂肪の増加
 では糖尿病になりやすいのはどんな人でしょうか。糖尿病は、膵臓で作られるインスリンが充分に出なくなる病気なのですが、日本人は欧米の人たちに比べ、インスリンを体内から出す量が少ない事が知られています。肥満で体脂肪が増えるとインスリンの効きが悪くなり、たくさんのインスリンが必要になりますが、それに体が対応できないと糖尿病の発症につながります。
 もともと大量のインスリンを出しづらい日本人は、少し太るだけで糖尿病になりやすい民族であると言えます。
 肥満と言っても外見上目立つ皮下脂肪よりも内臓脂肪が糖尿病の大きな要因になっています。糖尿病を予防するためには過食を避け、適度な運動して内臓脂肪をためない事が重要です。同じ体重の人でも余分の脂肪がなく、筋肉に置き換わっているスポーツ好きの人は、糖尿病をはじめとした生活習慣病にかかりにくくなります。
 身長に対する適正な体重(目標体重)は体脂肪などを考慮して決めるべきものですが、簡単な指標としては、目標体重(KG)=身長(m)×身長(m)×22がよいとされています。しかし最近高齢者では22を掛けた体重がベストとは限らないという研究報告が相次ぎ出され、日本糖尿病学会は2019年に65歳以上の患者には22~25を目安にするよう通達を出しました。
 特に75歳以上の後期高齢者は体重低下による筋肉の減少(サルコペニア)を避けることが大切です。


糖値をあらわす主な指標
 糖尿病患者が行う必要のある血糖コントロールの指標の一つにHbA1cがあります。この値は、過去1~2ヶ月間の血糖値とよく関連し、普段の血糖値が高いと大きくなり、良好な血糖値を保つと次第に正常に近づいてきます。正常値は、4.6~6.2%(ただし大部分の健康な人は4.6~5.5%)です。
 HbA1cの目標は、年齢, 服用している薬, 合併症の程度によって違いますので、かかりつけ医と相談しながら治療を続けてください。また認知症を伴う高齢者の糖尿病では、低血糖による弊害を避けるために高めの指標が示されています。

糖尿病の治療
糖尿病と診断された人の治療の最大のコツは、管理栄養士から正しい食事療法を教わり、運動療法と共に続けることです。合併症の段階によって食事の指示内容や運動量が変わる事がありますので、必ず医師に相談してください。
 これらを実践した後に必要なら内服や注射の治療が加わりますが、ここで薬に頼って食事が乱れると途中で薬が効かなくなり、治療は悪循環に陥ってしまいます。糖尿病食と聞くと無味乾燥な食卓を想像しがちですが、工夫次第でおいしく豊富な量の食事を楽しむことができます。当院では通常の病院食で炭水化物、蛋白質、脂質の正しい調和を学んでいただくと共に、年に数回は彦根産の高級食材を用いた「地産地消メニュー」を入院患者さんに提供し好評を得ています。

まとめ
 糖尿病の予防および治療をする時には、以下の事をよく覚えて実践してください。
(1)  病気をナメない、治療を投げない。
糖尿病を甘く見て後悔する人が多い半面、どうせ無理だと治療を投げだす人もいます。今は昔と比較にならない程、よい薬ができています。昔の患者さんに比べて得をしている事を忘れずに正しい治療を実践してください。
(2)  医療機関への通院をやめない。
マメに通院しているのにどんどん悪化する人はめったにいません。通院中断例は99%が次回受診時に悪化しています。通院と正しい生活習慣の継続が大切です。
(3)  管理栄養士と相談しながら正しく食事療法を実践する。糖尿病の食事についてさまざまな本が売られていますが、中には極端な内容になっていて勧められない場合もあるので、鵜呑みにせず必ず栄養士に相談してください。