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知って得する病気の話_不整脈の機序とカテーテル治療について(循環器内科)

[2020年8月4日]

ID:672

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知って得する病気の話

不整脈の機序とカテーテル治療について

天谷直貴(循環器内科)

今年の4月から当院循環器内科で勤務しております天谷と申します。今回は不整脈の機序とカテーテルを用いた治療についてお話ししたいと思います。 心臓は右心房・左心房・右心室・左心室の四つの部屋からできています。それぞれの部屋は筋肉の袋のようになっており、この筋肉が収縮・拡張することで血液を体中に送り出す働きをしています。正常な心臓では規則正しいリズムで拍動し、安静時には1分間に60~80回の脈拍が生じます。規則正しく心臓を収縮させるために心臓には電気信号(電池)とそれを心臓全体に伝える電線(伝導路)が存在します。右心房の上部には洞(どう)結節(けっせつ)と呼ばれる細胞が存在し、電気信号を作っています。洞結節から生じた信号が伝導路を介して心房全体を伝わり心房全体を収縮させたのちに、心室に伝播していきます。これを正常刺激伝導系といいます。
 不整脈とはこの電気系統に異常が出て心臓のリズムが乱れることであり、正常な方でも年齢とともに少しずつ異常がでることがあります。またストレス、疲労、寝不足、飲酒などでも不整脈は出やすくなりますので、予防には生活週間の改善を心掛けることも大切です。
 不整脈は脈拍が遅くなる「徐脈性不整脈」,速くなる「頻脈性不整脈」、そして脈が“飛ぶ”あるいは“乱れる”「期外収縮」の三つに大別されます。「頻脈性不整脈」では本来の刺激伝導系以外に異常な伝導回路が心臓内に存在し、その異常伝導回路を介して速い興奮旋回が発生するものになります。また「期外収縮」とは洞結節以外の心筋細胞が、洞結節の電気信号とは全く無関係に異常な電気信号を発生して心臓を収縮させるものであり、洞結節の電気信号で予期されるタイミングよりも早い心収縮が起こり、脈に乱れが生じます。
 めまいや失神を認める「徐脈性不整脈」の場合にはペースメーカの植え込みが必要となります。「頻脈性不整脈」や「期外収縮」では、動悸・息切れ・胸の不快感・胸痛・めまい・失神を認めることが多いですが、時に無症状のこともあります。
「頻脈性不整脈」では「発作性上室性頻拍」と「心房細動」がその代表となります。前者は突然脈が速くなり、規則正しいのが特徴です。カテーテルアブレーション(後述)で高率に完治が可能です。後者は心房が痙攣した状態となり、通常は頻脈となりますが、前者とは違い脈が不規則なのが特徴です。また痙攣した心房で血液がうっ滞(たい)して血栓ができ、脳梗塞などの原因になることがあります。多くの方で血液を固まりにくくする薬が必要となります。
 従来、「頻脈性不整脈」・「期外収縮」の治療は薬物が主体でしたが、その効果が確実でないこと、また服薬を中止すると元の状態に戻ってしまうなどの問題点があります。
 カテーテルアブレーション(カテーテル焼灼術とも呼ばれます)とは、足の付け根や首の血管から、先端に電極のついた太さ2mmほどのカテーテルを心臓内に挿入し、不整脈の原因となっている組織を探し出し、高周波エネルギーにて加熱(50~60度)して破壊することにより不整脈を根治する非薬物療法です。日本では1994年より健康保険での治療が認められ、

 昨年は日本中で6万例以上にこの治療が施行されました。
 最近増加している「心房細動」の多くもこの治療の対象となります。「心房細動」のほとんどは、肺静脈という肺から心臓につながる血管に原因があることが分かっており、カテーテルアブレーションにて肺静脈と心房の電気的なつながりを遮断することで根治が望めます。


 さらに3次元画像診断装置やアブレーションカテーテル自体の進歩などにより、アブレーションの成功(根治)率は向上し,70%~98%に達しています。
 また2014年からは、直径28ミリの風船で肺静脈の付け根を一気に冷凍して変性させる冷凍凝固アブレーションも施行できるようになり、治療がより簡便かつ短時間で済むようになっています。

 不整脈の種類・程度により若干のばらつきがありますが、カテーテルアブレーションでの治療時間は2~5時間程度、入院期間は4~5日間です。カテーテルを用いた局所麻酔での治療であり、体に対する負担は極めて少なく、手術翌日から歩行が可能です。
 近年の治療方法の向上により病状によっては根治も可能となってきていますが、一言で不整脈といってもさまざまな種類があり、他の病気が原因となっていることもあります。
 それぞれ病状に応じた治療を行う必要がありますので、カテーテルアブレーションの適応につきましては、かかりつけ医を通じて専門医に御相談ください。