ページの先頭です
メニューの終端です。

知って得する病気の話_知っていますか?下肢静脈瘤のこと(循環器内科)

[2019年7月10日]

ID:551

ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます

知って得する病気の話

知っていますか?下肢静脈瘤のこと

中野 顯(循環器内科)

【足の血管がコブになる病気、それが下肢静脈瘤です】

 下肢静脈瘤は足の血管の病気です。下肢とは足のことで、静脈瘤は血管(静脈)が文字どおりコブ(瘤)のようにふくらんだ状態のことをいいます。ただし、下肢静脈瘤は良性の病気で、以下のような病気の原因にはなりませんので安心してください。

・血のかたまりが飛んで脳梗塞や心筋梗塞をおこす

・エコノミークラス症候群になる

・血管のコブが破裂する

・足の切断が必要になる

 それでも、足のだるさやむくみ、まれに湿疹や潰瘍ができて重症になることがあります。このような方は、できるだけ早く病院を受診されることをお勧めいたします。


【「足がむくむ、だるい」が発症のサインです。】

 下肢静脈瘤の症状はほとんどがふくらはぎにおこります。足に血液がたまることによっておこるので、午後から夕方に症状が強くなるのが特徴です。しかし、足の症状は他の病気でも見られるので、心配な方は病院を受診してください。


10人に1人が下肢静脈瘤、あなたもその1人かも】

 下肢静脈瘤は、40歳以上の女性に多く認め、年齢とともに増加していきます。日本における患者数は1000万人以上と推定され、出産経験のある女性の2人に1人が発症するというデータもあります。下肢静脈瘤はまだまだ認知はされていませんが、実は身近な病気なのです。


【下肢静脈瘤になりやすい人は?】

 下肢静脈瘤は女性に多く、歳を重ねるほど増えていきます。遺伝性があり、両親とも下肢静脈瘤の場合には将来的にはその子供も90%発症することがわかっています。妊娠時にはホルモンの影響により静脈が柔らかくなって発症しやすくなります。立ち仕事、特に1ヶ所に立ってあまり動かない仕事(調理師・美容師・販売員など)の人は発症しやすく、特に1日10時間以上立っている人は重症化しやすい傾向にあるので注意が必要です。


【見た目でわかる4つのタイプの下肢静脈瘤】

 下肢静脈瘤は目で見た太さによって伏在型(ふくざいがた)・側枝型(そくしがた)・網目状・くもの巣状の4種類に分類されます。一般的に症状があり、手術が必要になるのは伏在型静脈瘤だけであり、他の3種類は軽症であまり心配のない静脈瘤です。


【診察から診断までの簡単な流れ】

【問診】患者様のお話を聞いて足の症状が下肢静脈瘤によって起こっているものか、他の病気によるものでないか、などを見極めます

【視診・触診】患部を見て触って、下肢静脈瘤の場所や膨らみ具合、むくみや皮膚の変色がないか、押して痛みがあるか、などを確認します

【エコー検査】外から見ただけではわからない足の静脈の状態を確認するために検査をします。エコー検査はゼリーを塗るだけなので、全く痛みがなく繰り返し行うことができます。これらの診察や検査はすべて保険適応となります。

【治療】最適な治療法をじっくり話し合って決定します。


【下肢静脈瘤の治療法】

 下肢静脈瘤の治療には保存的治療、硬化療法、手術、血管内治療の4つがあります。静脈瘤のタイプや患者さんの状態によって適切な治療を選択する必要があります。 

1)保存的治療:手術や薬による治療を行わず生活習慣の改善や弾性ストッキングの着用によって症状の悪化を防ぎます

2)硬化療法:静脈瘤に薬を注射して固めてしまう治療です。外来で行うことが可能ですが、進行した静脈瘤には効果が期待できない場合もあります。

3)手術療法(高位結紮術(けっさつじゅつ)・ストリッピング術):静脈を根元でしばったり、引き抜いてしまったりする治療です。

4)血管内治療:手術のように静脈を引き抜いてしまうかわりに、静脈を焼いてふさいでしまう治療です。細い管(カテーテル)を病気になった静脈の中に入れて、内側から熱を加えて焼いてしまいます。焼いた静脈は焼肉のように固く縮んでしまい、治療後半年ぐらいで吸収されてなくなってしまいます。局所麻酔で細い管を差し込むだけなので、痛みもほとんどなく、手術時間は30分程度で、手術直後から歩くことができ、翌日退院できます。現在はこの血管内治療が主流で、手術になる症例はごくわずかです。


 下肢静脈瘤は命にかかわる病気ではありませんが、自然に改善することはなく、時間の経過とともに徐々に悪化していきます。重症化すると皮膚炎を合併します。さらに悪化すると潰瘍になってしまいます。皮膚炎や潰瘍を合併しても治療をすることはできますが、回復が長引いたり、皮膚炎の跡が残ったりしますので、できれば皮膚炎をおこす前に治療を受けた方がよいでしょう。

 当院では昨年秋から下肢静脈瘤外来を開設し専門診療をおこなっております。下肢静脈瘤でお悩みの方は遠慮なくご相談ください。