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知って得する病気の話_肺がんについて(呼吸器外科)

[2019年1月4日]

ID:505

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知って得する病気の話

肺がんについて

林 栄一(呼吸器外科)

はじめに
 寿命が延びて,2人に1人ががんに罹り,3人に1人ががんで亡くなるという時代になってきました.肺がんは,2013年の統計では,罹患数では胃がん,大腸がんに次いで第3位(男性では第2位,女性では第4位)と近年増加してきています.肺がんと診断されたら,治療となるわけですが,肺がんの進行度や患者さんの体力によって治療方法が異なってきます.まず,治療法は,手術,化学療法(抗がん剤による治療),放射線治療が3本柱です.今回は手術となる場合を説明していきます.

手術の適応
 肺がんの患者さんがすべて手術を受けられるわけではありません.肺がんと診断され,肺がんがどの程度進行しているかを病期(ステージ)として表します.肺がんは1期から4期までに分類され,手術の適応があるのは,1期,2期です.腫瘍が限局して遠隔転移がなく,リンパ節転移がないか肺門リンパ節までに留まっている状態です.また,3期の一部は化学療法や放射線治療を先行してから,手術を行う場合があります.胸部レントゲン,CT,MR,骨シンチグラム,PET,気管支鏡検査などの検査で,肺がんがどの程度の病期であるかを判断すると共に,呼吸機能検査や心機能検査などを行い,手術に耐えられるかどうかの評価を行います.そして,手術に耐えられるだけの心肺機能がなければ手術はできません.却って寿命を縮めてしまうことがあるからです.

図1

肺がん!期症例の胸部レントゲン 左上葉結節影

図2

肺がん!期症例のCT 左上葉結節影

手術の種類
 肺は,右側には3つの肺葉(上葉,中葉,下葉),左側には2つの肺葉(上葉,下葉)があり,肺がんが発生した肺葉を切除し,リンパ節郭清をするのが標準的な手術です.がんの部位や浸潤状況によっては,複数の肺葉を切除する場合もあり,片肺全部を切除することもあります.肺の切除する範囲が大きければ,呼吸機能も大きく減少するため,術前の呼吸機能の評価が重要となります.術前の呼吸機能にあまり余裕のない場合は,縮小手術といって,肺葉の一部を切除するだけの手術を行う場合もあります.

図3

呼吸機能検査

手術方法
 手術の方法は,従来は開胸術といって,胸を大きく開いた手術でしたが,近年では,胸腔鏡を使用して,傷の小さい胸腔鏡下手術が増えてきました.術後の痛みも胸腔鏡下手術のほうが少ない傾向にあります.

図4

胸腔鏡下手術(1)

図5

胸腔鏡下手術(2)

図6

モニター・ビデオ光学機器など

図7

胸腔鏡

合併症
 肺がんの手術後に生じる合併症の中で,頻度の高いのは肺炎です.特に,ご高齢で喫煙の習慣のある方は,手術後に肺炎を生じる可能性が高くなります.喫煙による呼吸機能の低下を来していることが多く,手術後の痰の喀出が十分できないことが原因です.喫煙の習慣のある患者さんは,手術前からの禁煙が重要です.手術までに最低1ヶ月は禁煙をしておきましょう.日本の病院の中には,禁煙ができていないと,手術をしてくれないところもあります.

おわりに
 肺がんは,胃がんや大腸がんと比べると,治療成績はあまりよくありません.また,肺がんは,始めは自覚症状がなく,進行して症状がでてくることが多い疾患です.したがって,検診などを受けて,早期に異常が見つかり早期に治療ができれば,根治に繋がる可能性が十分あります.また,手術後の最終結果で1期と診断された患者さんは,ご希望があれば,クリニカルパス(私のカルテ)を用いて,地域の先生方(かかりつけ医)と情報を共有して,術後のフォローアップを行うことも滋賀県レベルで行っています.