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知って得する病気の話_血小板のはなし(血液内科)

[2018年10月22日]

ID:465

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知って得する病気の話

血小板のはなし

臼井 亜沙子(血液内科)

血液内科は、あまり馴染みのない科だと思いますが、今回は、血小板減少、特発性血小板減少性紫斑病について書かせて頂きます


【血小板】

けがをすると出血しますが、傷ついた血管の壁にふたのように貼り付いて、止血してくれるのが血小板という細胞です。では、血小板が、何らかの病気により少なくなってしまうとどうなるのでしょうか。当然のごとく、血が止まりにくくなります。血小板が少なくなることで、どんな症状が出るかというと、ぶつけた記憶のないところに打ち身のようなあざ(紫斑)や赤い点々(点状出血)が全身に出来たり、歯ぐきからの出血(歯肉出血)、鼻血がよく出る、などです。放置しておくと、これらの症状以外に脳や消化管、肺などの重要な臓器から出血がおこり、命に関わることもあります。

図1


【ITP

 血小板が少なくなる病気として、特発性血小板減少性紫斑病(Idiopatic Thrombocytopenic PurpuraまたはImmune Thrombocytopenia:ITP)という病気があります。ITPは国が指定する難病(特定疾患)の対象となっています。有病者数はおよそ2万人で、罹患率は10万人あたり2人程度とされています。

 急性型と慢性型があり、急性型は5歳以下の小児に多く、慢性型は20−40歳の女性に多いですが、高齢での発症もあります。慢性型の方は、症状がなく健診でたまたま発見されることもあります。

図2


【血小板が減少する原因は?】

 何らかの原因で血小板の表面にある蛋白物質に対する自己抗体(抗血小板抗体)が産生されます。この抗血小板抗体が結合した血小板は脾臓(ひぞう)などに取り込まれ、マクロファージという細胞に食べられてしまいます。また、骨髄での血小板の産生を低下させてしまうともいわれています。自己抗体がなぜできるのかは、はっきりとしたことはわかっていません。薬が原因になって発症することもあります。

図3


【ピロリ菌との関係】

ピロリ菌は、胃癌や胃潰瘍との関連があるとして知られていますが、ITPとも深く関わっており、ピロリ菌の除菌によって、血小板数が増加する方がいます。ピロリ菌とITPがどのように関係しているのかは、詳しくはわかっていません。


【ITPの治療】

無症状の軽症の方では、無治療で経過観察をします。血小板数が少なく、出血の危険性がある方では治療を行います。自己抗体の産生や働きをおさえることや、血小板数の産生を増やすことを目的とした薬物療法を行います。薬物療法でも難しい場合は、脾臓摘出を行うこともあります。

 

【血小板が少なくなる病気】

血小板が少なくなる病気は、ITPだけではなく、急性白血病、骨髄(こつずい)異形成(いけいせい)症候群(しょうこうぐん)、再生不良性貧血などその他の血液疾患でも起こります。また肝硬変や膠(こう)原病(げんびょう)など血液内科領域でない病気でも血小板が少なくなることがあります。 


どの年齢の方にも起こる病気ですので、疑わしい症状があれば、医療機関を受診してください。また血液検査で血小板が毎回少なく、精査を希望される方は、一度当科にご紹介ください。

図4