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知って得する病気の話_尿路結石症について(泌尿器科)

[2018年4月24日]

ID:358

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知って得する病気の話

尿路結石症について

佐野 太一(泌尿器科)

【はじめに】
 尿路結石とは上部尿路結石(腎結石、尿管結石)と下部尿路結石(膀胱結石、尿道結石)を合わせた尿の通り路にできる結石の総称です。上部尿路結石が96%を占めており、皆さんの周りにも尿管結石の痛みで苦しんだ方がいらっしゃるのではないでしょうか。今回は尿管結石を中心にお話しします。
尿路結石の例

尿路結石の一例

【尿管結石の症状】
 典型的な最初の症状は脇腹から下腹部にかけての突然の激痛です。「動くと痛い」というのは結石の症状ではなく筋肉や骨からの症状のことが多いのですが、尿管結石の場合はじっとしていてももだえるほどの症状が出ることがあります。「結石の痛みはお産の次に痛い」と言われるほどです。結石が大きいほど痛みが強いと思われる方が多いのですが、小さな結石の方が突然に強い痛みがでます。目で見てわかるほどの血尿が出る場合がありますが、出ないことの方が多いようです。尿管結石の症状のうち危険な症状は発熱です。結石が詰まって腎臓に尿が溜まることを水腎症と言いますが水腎症に細菌感染が起こると腎盂腎炎を起こし高い熱が出ます。重症化することがあるので必ず泌尿器科を受診してください。

【どんな人がなりやすいか】

 尿路結石の患者さんの男女比は2.4:1で男性に多い傾向があります。一生のうちに尿路結石を患う割合は、男性では7人に1人、女性では15人に1人と決して珍しい病気ではありません。男性では40歳代が多いのですが、女性では閉経後に発症しやすくなるため50~70歳代が多くなります。最近では生活習慣病(肥満、高血圧、糖尿病など)と尿路結石の関係が明らかになっています。とくに結石患者さんに肥満の方が多く、男性結石患者さんの実に40.3%が肥満であることが分かっています。肉の食べ過ぎや塩分の摂り過ぎが大きく関わっているようです。

【診断の方法】

症状から尿管結石が疑われる場合は、検尿・レントゲン・超音波検査などが行われます。加えて診断の確定にはCT検査が有用です。小さな結石はレントゲンや超音波では診断が難しい場合も多いのですが、CTでは95%の結石が診断できるとされています。ただし妊婦さんの場合はレントゲンやCTは通常は行いません。

【治療の方法】

痛みが強い時はもちろん痛み止めの治療をまず行います。最初の発症時は坐薬や注射で痛みを抑えてから治療計画を立てます。

1cmまでの結石は自然に排石する(尿と一緒に出てくる)ことが多いので、まずは水分を多く摂るようにして排石を待ちます。発熱がなければ普段どおりの生活をして問題ありません。1cmまでの結石の3分の2は1ヶ月以内に排石されます。排石促進剤を使うこともありますが、残念ながらごく一部の特殊な結石を除いた一般的な結石は薬では溶けません。1cmを超える結石や、小さくても発症から1ヶ月を超える場合は腎臓機能に影響が出てくるので治療が必要となります。昔は開腹手術で結石を摘出することもありましたが、現在では体外衝撃波治療と経尿道的手術(内視鏡手術)が主流です。


対外衝撃波治療の写真

当院の体外衝撃波治療

  1.    体外衝撃波治療  
     体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は音波の一種である衝撃波を結石にぶつけることで砕いていく治療です。結石が消えて無くなるわけではなく、ヒビが入って細かくなることで排石しやすくすることが目的です。1回の治療は1時間ほどです。体の負担の少ない治療ですが、結石の硬さによっては全く割れなかったり割れても排石しないことがあります。成功率は70~80%です。結石の位置によっては日帰りで行うこともありますが、1泊2日をお勧めしています。当院では平成29年に体外衝撃波装置が新しくなりました。
  2.  経尿道的手術(内視鏡手術)
     経尿道的尿管結石砕石術(TUL)は全身麻酔や下半身麻酔をかけて尿の出口から尿管鏡という細い内視鏡(カメラ)を体内に入れて、テレビ画面を見ながら行う手術です。メスは使わない手術のため体に傷はつきません。結石が見える位置まで内視鏡を進めて、機械で結石を砕いて掴む道具で体外へ摘出します。当院では主に結石破砕専用のレーザーで砕いています。レーザーを使う手術は比較的新しい治療法ですが、腎結石の治療も同時にできることと他の機械に比べて成功率が高いことが特徴で成功率は90%以上です。手術時間は結石の大きさや数によって異なりますが、2~3時間程度です。術後に発熱がなければ入院期間は5日間前後です。
尿管鏡の写真

尿管鏡2種類

経尿道的手術の写真1

経尿道的手術1

経尿道的手術の写真2

経尿道的手術2

【再発予防】
 再発予防の基本は(1)水分の多量摂取、(2)肥満の防止、(3)食生活の改善です。心臓や腎臓に問題がない場合は1日2000mL以上の水を飲んで尿量を増やして尿を薄くすることが重要です。肥満や肉・塩分の摂り過ぎは尿路結石だけでなく他の病気の原因にもなりますので改めなければなりません。食事に含まれる成分で結石に最も関与するのはシュウ酸という成分です。シュウ酸を多く含む食品は、ホウレン草、タケノコ、紅茶、コーヒー、緑茶、バナナ、チョコレート、ココア、ピーナッツ、アーモンドなどが挙げられます。カルシウムと一緒に摂ることでシュウ酸の吸収が抑えられるため、紅茶やコーヒーには牛乳を入れたり、ホウレン草のおひたしにはおジャコを乗せたりすることも有効です。

【おわりに】
 尿管結石はとても痛い病気なので初めて発作が出た方は心配になることと思います。当院では最新の体外衝撃波装置やレーザー装置を備えており良好な治療成績を残していますので安心して受診してください。