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知って得する病気の話_夏に流行する子どもの病気(小児科)

[2017年8月16日]

ID:300

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知って得する病気の話

夏に流行する子どもの病気

安部 大輔(小児科)

夏カゼと熱中症

梅雨もそろそろ明け、いよいよ夏本番です。子ども達にとって、これからの季節に特に気をつけたい病気が夏の感染症(一般に夏カゼといいます)と熱中症です。今回はこれらの病気についてお話します。

夏 カ ゼ

 夏カゼの多くは、エンテロウィルスとアデノウィルスというウィルスが原因で発症します。手足口病、ヘルパンギーナ、無菌性(むきんせい)髄(ずい)膜炎(まくえん)はエンテロウィルス属のコクサッキーウィルスやエンテロウィルス、エコーウィルスなどが原因となります、一方で咽頭(いんとう)結膜熱(けつまくねつ)はアデノウィルスが原因となります。いずれも複数のウィルスが原因となるので、何度でもかかることがあります。直接治療する特効薬はないので、自然治癒を待ちます。有効なワクチンは無く、手洗いやうがいなどの感染予防が重要です。

ウイルスの画像

手足口病

 4歳までの乳幼児に多く見られますが、学童期のお子さんにも発症することがあります。手、足、口、臀部に米粒大ほどの固い水ぶくれのような発疹ができます。やがて破れて潰瘍になり、痛痒くなってきます。口の中の痛みにより食事や水分が摂りづらくなって、脱水症状を起こすことがあります。熱は無いか、微熱程度です。近年のコクサッキーウィルスA6による手足口病では、高熱が出て、発疹が大きく、発症後しばらくしてから、爪が脱落するなどの症状が強く出ることもあり注意が必要です。

ヘルパンギーナ

 5歳までの乳幼児に多く見られます。突然38~40度の高熱が出て、2~3日間続きます。のどの奥に小さな水ぶくれができて痛いので,食事や水分が摂りづらくなって、脱水症状を起こすことがあり、注意が必要です。

無菌性髄膜炎

 無菌性髄膜炎とは、細菌による髄膜炎以外の髄膜炎の総称ですが、エンテロウィルス属によるウィルス性髄膜炎の割合が最も大きいため、夏に患者数が増加します。主な症状は,高熱,頭痛,嘔吐です。首の後ろの部分が硬くなり、首を前に曲げることができなくなります。激しい頭痛が続いたり、頻繁(ひんぱん)の嘔吐で脱水症状を起こしたりして入院されることがあります。無菌性髄膜炎を起こしているかどうかは、髄液検査をしないと正確には診断できません。点滴などで十分な水分補給を行いながら自然治癒を待ちます。

咽頭結膜熱

 アデノウイルスによって起こる感染症です。39~40度の高熱が4~5日続き、喉の痛みが強く、結膜炎を起こして眼がまっ赤になります。頭痛、はき気、腹痛、下痢を伴うこともあります。夏期に流行するため、プール熱と呼ばれていますが、現在のプールの塩素濃度で感染することは通常ありません。高熱がしばらく続くので、脱水症状に注意が必要です。

 熱中症とは暑熱(しょねつ)環境下(かんきょうか)に生体が適応できずに発生するさまざまな障害の総称です。 近年、 地球温暖化や都市化に伴うヒートアイランド現象などにより熱中症患者は増加傾向にあります。

 日本救急医学会が行った全国調査によると、小児の熱中症の多くは小中学生の男児に多く、スポーツ中に発症する割合が最も高くなっています。小児は成人に比べ、汗腺の発達が十分でなく、汗による放熱が不十分となり、運動で発生した熱を放散することができなくなって、熱中症を発症します。また、汗でナトリウムも喪失しますが、水やお茶などのナトリウムを含まない水分を大量に摂取すると有痛性の筋けいれん(こむら返り)を起こします。また、乳幼児は、暑い自動車内に残されて亡くなるという痛ましいニュースが毎年のように報道されます。

熱中症の重症度分類と対応

 従来、熱中症は熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病の4つの病型に分類されていましたが、日本救急医学会が2012年病型分類を整理し、重症度を1~3度までの3段階に分類しました。これにより、一般市民から医療者まで幅広く理解できるように工夫され、早期診断、治療につながるようになりました。

 1度熱中症は、体温は上昇せず、意識は清明で、臓器障害は認めません、現場で安静や冷却、水分、ナトリウムの補充で対応可能です。

 2度熱中症は、体温が上昇し始め、発汗量が著明で、脱水状態が進行しているため、頭痛や嘔吐、だるさ、集中力や判断力の低下を認めます、この場合は医療機関での点滴などの治療が必要となります。

 3度熱中症では、もはや発汗は無く、体温は40度を超え、さまざまな臓器に障害を起こしたり、意識が無くなったりします。病院での集中治療が必要となります。

日本救急医学会熱中症分類2015

熱中症を予防するには

 スポーツ中の熱中症を予防するには、運動中のこまめな水分補給が必要です。また、環境条件に応じて運動の強度や運動時間を調節し、場合によっては運動を中止することも検討しましょう。吸湿性や通気性が良い素材の衣類を選びましょう。睡眠不足や体調不良の際に無理に運動をするのはやめましょう。

 また、乳幼児を車内に残すことは短時間であっても大変危険です。