知って得する病気の話_末梢動脈疾患のお話(循環器科)
[2017年8月15日]
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末梢(まっしょう)動脈(どうみゃく)疾患(しっかん)(PAD)とは
皆さんは、末梢動脈疾患という病気を聞いたことがありますか?恐らくこれを読んでいるほとんどの方が『知らない!』と答えるでしょう。では、脳梗塞や心筋梗塞という病気はどうでしょう?これならほとんどの方が『知っている!』と答えるでしょう。しかし実はこれらはすべて動脈硬化が原因の同じ種類の病気なのです。
末梢動脈とは心臓と頭蓋内(ずがいない)動脈以外のすべての動脈のことを指します。そして末梢動脈に動脈硬化が進行し、狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)をすることでさまざまな症状を引き起こす病気の総称を末梢動脈疾患と呼びます。特にその中でも動脈硬化が進行しやすい場所が下肢です。下肢動脈が閉塞することで、下肢の疼痛(とうつう)やしびれ、冷感やひどいときには潰瘍(かいよう)や壊死(えし)をきたす場合があります。末梢動脈疾患は一般の方の認知度は約3%程度とほとんど知られていませんが、実は非常に恐ろしい病気なのです。この病気は下肢の症状が出てから放置した場合の死亡率が大腸がんより高く、その死亡原因の7割以上が心筋梗塞や狭心症であるとされております。実際末梢動脈疾患を見つけた場合に、すでに狭心症を合併している割合は、糖尿病患者の場合では約5割と極めて高率です。また末梢動脈疾患は脳こうそくの合併も多いとされます。
ではなぜ、足の動脈硬化が起こっていると、心臓や頭にも動脈硬化が起こるのでしょうか?皆さんは動脈硬化って歳をとってからなるものだと考えていると思います。しかし実は、動脈硬化というのは血管の老化現象ですので、当然生まれた時から老化は開始されており、10代は10代の動脈硬化が、30代は30代の動脈硬化がすでに起こっているのです。そして動脈硬化が進むのは、全部が同時というわけではありません。一番初めに起こるのが、大動脈、続いて心臓の冠動脈や頸動脈、その後に末梢動脈という順番があります。これが数十年かけてゆっくりと進行していくのです。つまり、最後に動脈硬化が起こる末梢動脈に狭窄を起こすということは、すでに何十年も前から心臓や頸動脈に動脈硬化が進行していると考えるべきなのです。ですから、末梢動脈疾患患者はみつかった時点で、全身に動脈硬化がかなり進んだ状態であると考えられます。つまり末梢動脈疾患患者を見つけることは、全身の動脈硬化が進行している予後が悪い患者を見つけることにつながるのです。
末梢動脈疾患の症状
では下肢の末梢動脈疾患にはどのような症状があるのでしょうか?現在はフォンテイン分類もしくはラザフォード分類という症状分類が用いられております。フォンテイン分類の場合1~4度まであり、
1度:足が冷たい・足がしびれ、皮膚が青白い
2度:少し歩くと足が痛くなり休むと痛みが治る。(間欠性(かんけつせい)跛行(はこう))
3度:じっとしていても足が痛む
4度:足に潰瘍や壊死が起こる。
と数字が大きくなると症状も悪くなります。またフォンテイン3・4度の症状がある場合には重症(じゅうしょう)虚(きょ)血(けつ)肢(し)と呼んでおります。重症虚血肢になると、1年後までに死亡もしくは下肢切断となるかたは半数を超えるという、非常に恐ろしい結果となっております。
末梢動脈疾患の診断方法
では、早期発見するためにはどうすればよいのでしょうか?末梢動脈疾患の最も優れた検査法は何といっても血圧脈波検査です。この検査は普段血圧を測るときに巻くマンシェットを、両腕と両足の4か所に巻いて同時に四肢の血圧を測定するものです。約5分程度でできる非常に簡単な検査ですが、末梢動脈疾患を的確に発見することが可能です。また、血管の硬さや血管年齢もわかる検査ですので、患者さんにはよく『動脈硬化疾患の予後がわかる検査です。』と説明しております。
検査結果も非常に簡単なもので、足の収縮期血圧/腕の収縮期血圧と割り算を行い、1.0以上は正常0.9~0.99は境界型、0.9未満は末梢動脈疾患と診断されます。これで末梢動脈疾患の疑いがある場合には、エコーやCT、MRI、カテーテル検査などでの評価を行います。これは先ほど述べたとおり、下肢の血管が閉塞している場合には、全身の動脈硬化を評価する必要があるからです。
末梢動脈疾患の治療方法
では、末梢動脈疾患と診断された場合にはどのような治療を受けるとよいのでしょうか?
さいごに
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。至らない点もあると思いますが、末梢動脈疾患についてご理解いただければ幸いです。末梢動脈疾患は全身の動脈硬化の病気です。放置すると予後が悪いだけでなく、脳こうそくや心疾患につながりますが、逆に5分程度の簡便な血圧脈波検査を行えばその診断ができるのです。早期発見をし、早期治療につなげるために、皆さんがこの病気についての知識を深めていただき、症状が気になれば,いつでも当院循環器科を受診してください。当院では診療時間内であればいつでも血圧脈波検査を行うことができます。よろしくお願いいたします。
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