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知って得する病気の話_花粉症のお話(耳鼻いんこう科)

[2017年8月15日]

ID:262

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知って得する病気の話

花粉症のお話

はじめに

日に日に暖かくなって来ました。進学、卒業、新しい人との出会いなどで心躍る季節です。そんな中、憂鬱そうな顔の方がおられます。そうです、花粉症の方たちです。

これから花粉症についてお話しさせていただきます。

 

花粉症とはどんな病気?

 日本では一般的に春先のスギ、ヒノキ花粉を原因とするアレルギー症状をおこす疾病を指します。ですから、他にも東北・北海道のしらかんば、秋のキク科花粉、夏のイネ科花粉、欧米のブタクサ花粉もありますが、日本での頻度、症状の強さから普通に花粉症と言えばスギ花粉症が代表格です。

 症状はくしゃみ、鼻水、鼻閉、目のかゆみ、身体のだるさ、不眠などです。

 以上の症状で集中ができず、勉強や仕事に支障が生じてしまいます。

 

 花粉症患者は近年増加傾向で4人に1人の方が発症しています。最近10年で10%も増加しています。

 その原因はまず、花粉量の増加です。日本の森林植林面積の18%がスギ、10%がヒノキです。戦後植林された木が成熟期を迎え盛んに花粉を産生しています。近年、花粉飛散を押さえた植林がなされ始めましたが、その効果が出るのは20~30年先です。スギ、ヒノキは生育の速さ、建築材料となること、地球温暖化防止効果が高いなど大変有用な樹木です。林野庁でも現状の植林計画を大きく変える方針は出ていません。ですから、花粉症の方は当分の間お付き合いする覚悟が必要です。

 また、大気の汚れも原因の一つです。アレルギーが成立するには原因物質が鼻、咽頭粘膜などに長時間留まる必要があります。ただ、鼻に入っただけの花粉は鼻水で流され、くしゃみで吹き飛ばされ身体の外に排出されます。その仲介となるのが大気中の微小炭素粒子です。石原都知事がディーゼルガス規制を発表する際にペットボトルに入れて振っていた、まっ黒いやつです。炭素は物を吸着する性質があるのです(活性炭は臭い取りなどに使われます)。また、花粉が破裂し内部からアレルギー物質が飛散する際にも大気汚染物質が関与します。ですから、花粉の多い山間部に住む人と都会に住む人では、都会に住む人の方がアレルギーを発症する割合が多いのです。それに加えて花粉は天気の良い日は風に乗り10kmは移動します。ですから完全に縁を切るのは困難です。近年、中国やインドの大気汚染のニュース映像を見ると今後アレルギー患者の増加が予想され悲しい気持ちになります。

片岡健一(耳鼻いんこう科)

花粉症の症状

今年の花粉症は?

 花粉症はかなりの精度で予報可能です。

 花粉は樹木の成熟した雄花で産生されます。実際に樹木を観察し、雄花の生育状況を確認することでそのシーズンの花粉総飛散量がわかるのです。雄花は前年の6月から10月頃までに産まれ成熟します。その期間の日照量が多いほど、降水量が少ないほどよく発育します。では、昨年の夏から秋の天候はどうだったでしょうか?昨年は夏に発生したエルニーニョ現象の影響で毎月の様に台風が発生していましたね。西日本ではそれが原因で例年より低温、多雨、日照量不足となりました。結果、朗報です!今シーズンの花粉飛散量は例年より少ない予報が出ています。しかし、前年飛散が少なかった翌年は飛散が多い傾向があります。統計では1年ごとに飛散量が多い年少ない年が繰り返されています。 

自分も将来花粉症に!?

 興味深いデータがあります。福井県で行われた調査です。ボランティアの学生に対して行われた調査で、血液検査で抗体(アレルギーの原因)量を調べたものです。それによると、ハウスダストで約60%、スギで約50%の方で抗体が出来ていることが分かりました。実際にはそんなにアレルギーを発症している方はおられないのですが、そんな方はアレルギー予備軍と言われています。患者さんから「なぜこんな年になって急に…」と言われることがあります。今症状の無い方でも他人事と思わずに興味をもっていただけたら幸いです。 

花粉症を防ぐには?

 まず花粉を身体に入れない努力が肝要です。花粉シーズンは天気予報と合わせて花粉飛散量予報が発表されるようになりました。多い予報の日はできるだけ外出は避ける、外出される際はマスク、眼鏡、服装も表面がすべすべなものにするなど身体、自宅に花粉を入れない工夫が必要です。

表面がけばだった毛織物などのコートの使用は避ける。 

 

 次に治療ですが、アレルギーの強い方はどんなに身体に入れない努力をしても少量の花粉でも症状が出てしまいます。その様な方には初期療法が勧められます。これは症状が出る1~2週間前から抗アレルギー剤を使用し始める治療です。症状の強さを押さえ、つらい期間を短くする効果があります。毎年症状の出る方は覚えておかれると良いと思います。

 また、症状の強い方には手術治療もあります。症状を完全にゼロにするのは困難ですが、軽減することは可能です。レーザー手術でしたら日帰りで治療可能です。

また、昨年認可のおりた治療で舌下減感作(ぜっかげんかんさ)療法(りょうほう)という治療法があります。原因物質を積極的に身体に取り込むことによって早く身体を慣れさせてアレルギー反応を起こさない体質にしようとする治療です