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知って得する病気の話_COPDについて(呼吸器科)

[2017年9月22日]

ID:261

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知って得する病気の話

COPDについて

月野光博(呼吸器科)

COPDについて  

          

【COPDとは】

 COPD(シーオーピーディー:慢性閉塞性肺疾患)は、いままで慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。

【COPDの発症数、潜在的な患者】

 40歳以上の人口の8.6%、約530万人の患者が存在すると推定されていますが、大多数が診断されておらず、治療を受けていない状態であると考えられています。全体では死亡原因の9位、男性では7位を占めています。

【発症の主な原因】

 最大の原因は喫煙であり、喫煙者の15~20%がCOPDを発症します。タバコの煙を吸入することで肺の中の気管支に炎症がおきて、せきやたんが出たり、気管支が細くなることによって空気の流れが低下します。また、気管支が枝分かれした奥にあるぶどうの房状の小さな袋である肺胞(はいほう)が破壊されて、肺気腫という状態になると、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下します。COPDではこれらの変化が併存していると考えられており、治療によっても元に戻ることはありません。

COPDの発症原因の図

【COPDの特徴的な症状】

 歩行時や階段昇降など、身体を動かした時に息切れを感じる労作時呼吸困難や慢性のせきやたんが特徴的な症状です。一部の患者では、喘鳴(ぜんめい)や発作性呼吸困難などぜんそくの様な症状を合併する場合もあります。

慢性のせき、たん
体動時の息切れ


【COPDの検査と診断】

 長期の喫煙歴があり慢性にせき、たん、労作時呼吸困難があればCOPDが疑われます。確定診断にはスパイロメトリーといわれる呼吸機能検査が必要です。最大努力で呼出した時にはける全体量(努力性肺活量)とその時に最初の1秒間ではける量(1秒量)を測定し、その比率である1秒率が気道の狭くなっている状態(閉塞性障害)の目安になります。気管支拡張薬を吸入したあとの1秒率が70%未満であり、閉塞性障害をきたすその他の疾患を除外できればCOPDと診断されます。また、重症例では胸部エックス線画像で肺の透(注)過(1)性亢進や過(注)膨(2)脹所見が見られることもありますが早期診断には役立ちません。また、COPDは全身の炎症、骨格筋の機能障害、栄養障害、骨粗鬆症などの併存症をともなう全身性の疾患です。これらの肺以外の症状が重症度にも影響を及ぼすことから、併存症も含めた病状の評価や治療が必要になります。

呼吸機能検査の図
呼吸機能検査の図2


【COPDの治療】

 COPDに対する管理の目標は、(1)症状および生活の質の改善、(2)運動能と身体活動性の向上および維持、(3)増悪の予防、(4)疾患の進行抑制、(5)全身併存症および肺合併症の予防と治療、(6)生命予後の改善にあります。気流閉塞の重症度だけでなく、症状の程度や増悪の頻度を加味した重症度を総合的に判断したうえで治療法を段階的に増強していきます。喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速してしまいますので、禁煙が治療の基本となります。増悪をさけるためには、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が勧められます。薬物療法の中心は気管支拡張薬(抗コリン薬・β2刺激薬)です。効果や副作用の面から吸入薬が推奨されており、主として長時間気管支を拡張する吸入抗コリン薬や吸入β2刺激薬が使用されています。気流閉塞が重症で増悪を繰り返す場合は、吸入ステロイド薬を使用します。薬物療法以外では呼吸リハビリテーション(口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの呼吸訓練・運動療法・栄養療法など)が中心となります。低酸素血症が進行してしまった場合には在宅酸素療法が導入されます。


注1:レントゲン写真で肺が通常よりも黒く見える状態です。肺気腫などの場合に見られます。

注2:肺がふくらんだ状態で通常の肺に比べて膨張したままになってしまう事です。

[日本呼吸器学会:「呼吸器の病気」より引用]