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知って得する病気の話_乳がんについて(外科)

[2017年9月13日]

ID:259

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知って得する病気の話

乳がんについて

岡村 見(外科)

【乳がんって?】

皆さんは乳がんについてどのようなイメージをお持ちでしょうか?

「がんは治らない」「抗がん剤はしんどいし、手術は怖いし、治らないならやる意味ない」というネガティブな話をちらほら見たり聞いたりします。 でも実状は、違います。

乳がんについてもうちょっと正しいイメージを持ってもらえたらと思い、説明させていただきます。

 

【乳がんの現状】

1994年、がんの中で、乳がんを発症する率が胃がんを抜いて日本女性のトップになりました。 現在、日本人女性の14人に1人が人生のどこかのタイミングで乳がんを発症し、年間約6万人が乳がんになります。

乳がんになる率が最も高いのは、欧米では閉経後60歳以上ですが、日本では閉経前の40代後半~50代前半となっています。

25年前と比較すると乳がん発生の頻度は約2.5倍となり、増加は続いています。もはやよくある病気、一般的な病気といっていいレベルになってきています。

しかし、乳がんで亡くなる率はがんの中では5位と比較的低めです。

 

【乳がんのリスクファクター】

乳がん発症のリスクを上げるものとしてほぼ確実なのは、(1)閉経後の肥満、(2)未産、(3)初産年齢が高い、(4)授乳経験なし、(5)乳癌の家族歴がある、(6)閉経後のホルモン補充療法の一部、(7)飲酒、(8)喫煙、などです。あと、確実ではありませんが、リスク増加の可能性として(9)受動喫煙、(10)夜間勤務、などが疑われています。

逆に、乳癌発症のリスクを下げるものとしてほぼ確実なのは、(1)初産年齢が低い、(2)授乳期間が長い、(3)閉経後の運動、などがあります。

 

【検診】

乳がんは、がんの中では比較的進行が遅く、お薬もよく効くものが多いので、「早めに見つけて」「早めに治療」すれば、治ってしまう方も多くおられます。

その「早めに見つけて」「早めに治療」を行うために、検診が重要となってきます。40歳以上の女性に2年に1回のマンモグラフィ検診が推奨されています。

欧米では1970年代よりマンモグラフィ検診を導入し、乳がんで亡くなる率の減少が確認されています。

日本では受診率が極端に低いことが課題となっています。前述したように、乳がんはめずらしい病気ではありません。「私は大丈夫」と思わずに、積極的に受診しましょう。

 

 

【症状】

痛みなどの自覚症状は早期であれば、ほぼありません。乳がんの症状として典型的なのは「硬いしこり」「乳頭からの出血」等です。

ほとんど症状がないのでまれに放置される方がおられますが、放っておくとしこりが巨大化し、乳がんが皮膚に出てきて出血したり、悪臭をともなったりします。また、治療の面でも、手術で取りきれないほど大きくなったり、他の臓器に転移してしまい、完全に治すことが不可能になってしまいます。

もし乳がんであれば、何もしないで「そのうち治る」ことは絶対にありません。むしろどんどん治る可能性が低くなります。「乳がんと診断されたら怖いな」と思い、病院に行くのが億劫になる、先延ばしにしたくなる気持ちもわかりますが、「早めに見つけて」「早めに治療」すれば、完全に治る可能性があります。「しこり」に気付いたら怖がらずに、勇気を出して早めに病院に行きましょう。

乳がんの診察の流れ


【診断から治療へ】

残念ながら悪性、がんと診断がついてしまうこともあります。落ち込んでしまうことはもちろんですが、あきらめる必要はありません。悪性の診断がついたら、CT検査等で他の臓器に転移していないかどうかを見ます。他の臓器に転移していなければ、手術、抗がん剤、ホルモン治療薬等で完治する可能性が残っています。

乳がんの種類、患者さんの状態に合わせて、最も良い治療を考えていきます。他の臓器に転移が見つかってしまっても、悲観することはありません。完全に治すことは困難ですが、病気をコントロールしていくことは可能です。

よく言われる、「病気と付き合っていく」ことになります。抗がん剤、ホルモン治療薬で、がんを抑えていきます。乳がんの治療薬は近年どんどん増えてきていますので、長期間のコントロールを期待できることもあります。

 

【最後に】

いかがでしょうか?この文章で乳がんのイメージを大体つかんでいただけたら幸いです。

乳がんは、よくある病気で、乳がんになることは恥ずかしいことでも何でもありません。

早期に、適切な治療をすれば治る可能性がある病気です。発見が遅れたり、治療が遅れても、まだ手はあります。でも、恐れて逃げてしまったら、必ず負けてしまいます。

「あれ?おかしいな、乳がんかもしれない」と思うことがあったら、勇気を出して病院に行きましょう。

最後に、私の好きな英語のことわざを引用して終わりたいと思います。“Fortune favors the brave”(運命の女神は勇者に味方する)

一緒に、乳がんに立ち向かっていきましょう!