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脳神経外科だより-クモ膜下出血は予防できるか?その3-/病院からのお知らせ

[2017年6月23日]

ID:109

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脳神経外科だより-クモ膜下出血は予防できるか?その3-

その3:手術をした方が良いのか

検査で脳動脈瘤がみつかれば、手術をした方が良いのでしょうか?結局、見つかった脳動脈瘤が将来破裂する危険性と、これを手術する危険性とを較べて、どちらの方が危険かで手術の適応が決まります。
まず脳動脈瘤のすべてが破裂する訳ではありません。破裂して初めて気付くほどなので、どれくらいの人が脳動脈瘤を持っており、その内の何%くらいが破裂するのか、はっきりとはわかっておらず、現在、大規模な調査が行われているところです。しかし、これまでにも多くのデータが積み重ねられ、全人口の約5%の人が脳動脈瘤を持っていると推測されており、これが出血する危険性は1年に1%程度と考えられています。また、破裂しやすい脳動脈瘤の大きさ、形、部位、年齢、性別、破裂しやすくする影響因子(高血圧、喫煙、飲酒など)が指摘されています。さらに、家族に脳動脈瘤を持つ人の保有率は高く、破裂率も高くなることがわかっています。
一方、出血してから行う手術にくらべると未破裂脳動脈瘤の手術の方が安全なことは確かですが、どんなにうまい脳神経外科医が手術しても、必ず合併症を引き起こす可能性があるのです。統計では、未破裂脳動脈瘤の手術の合併症は7%、死亡率は3%未満とされています。しかし、これはすべての場合を合わせた数字であり、実際には、脳動脈瘤の大きさ、形、部位、患者の体調や年齢などによって手術の成績は左右されます。
未破裂脳動脈瘤の破裂率を単純計算すると10年で10%ということになりますが、実際は計算よりも低めのようです。手術の合併症の発生率7%と較べると、ほとんどの人が手術の対象に入ってしまいそうですが、合併症の発生率は70歳頃から急激に増えるため、70歳くらいまでが適応と考えられており、他に病気を患っている人はさらに適応が狭まります。手術に関しては、手術しにくい脳動脈瘤の部位や形があり、技術的な難しさの一般的評価基準はあるものの、最終的にその危険性はケース・バイ・ケースで執刀医の判断に任されます。逆に破裂する可能性の高いと思われるタイプの脳動脈瘤は、できるだけ手術すべきでしょう。手術の適応基準は以下のようにまとめられます。

  1. 年齢は70歳以下
  2. 他に大きな病気をしていないこと
  3. 手術の合併症の少ないと思われる脳動脈瘤のタイプ
  4. 破裂する可能性が高いとされるタイプ(家族内発生の場合など)