ページの先頭です
メニューの終端です。

知って得する病気の話_やけどのおはなし(形成外科)

[2017年8月15日]

ID:14

ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます

知って得する病気の話

やけどのおはなし

伊藤文人(形成外科)


 やけどの原因にはさまざまなものがあります。多いのはお湯によるものですが、それ以外にも油や火、熱いものに接触したなどがあります。また、湯たんぽやあんか、カイロなどそれほど熱くないものでもやけどをすることがあります。

 では、やけどをしてしまったときに大事なことはなにでしょうか?みなさんも聞いたことがあると思いますが、やけどをしてまずすることは冷やすことです。熱湯を10秒間接触させたときの皮膚の下1mmでの温度の変化を測定した実験では、熱湯との接触がなくなってからも30秒までは皮膚の下の温度は上昇し続けます。そして元の皮膚の温度に戻るまでに3分近くもかかります。皮膚の温度が高い時間が長ければ長いほどやけどは深くなるので、やけどをしたときは早く冷やして早く皮膚の温度を下げてあげる必要があるのです。よく「どれぐらいの時間冷やしたらよいのですか?」と聞かれますが、ひりひりとした痛みが落ち着くまで冷やしたほうがよいといわれています。ただし、氷などで冷やすことはかえって凍傷になったりなど逆効果になる場合もありますので、流水や少し氷をいれた水袋などで冷やすのがよいかと思います。

 

やけどの跡は残るのか?

 やけどをして、病院を受診された方の多くは、「跡は残りますか?」と言われます。正直、最初は分からない場合が多くあります。やけどの跡が残るかどうかは何で決まるのでしょうか?多くの場合はやけどの深さです。やけどは一般的には1度・2度・3度と深さが分類されます。



熱傷の深さの分類
(ヘルス出版 ドレッシング新しい創傷管理より)


1度熱傷

 1度は赤くなってひりひりしますが、そのまま落ち着いてしまうものです。忘れたころに皮膚の表面がぼろぼろと剥がれてくることがあります。ちょうど日焼けの少しひどいようなものです。この場合、傷跡としては残りませんが、色素沈着といってしみのような状態になる場合はあります。


2度熱傷

 2度は多くの場合、水疱(みずぶくれ)ができます。しかし実は2度のなかに浅達性2度熱傷(浅いもの)と深達性2度熱傷(深いもの)が存在します。この境界が非常に微妙で判断に困ります。当然混在する場合もあります。2度の場合、皮膚の真皮と呼ばれる部分は残っていますので、下から皮膚がはってくるように治癒することができます。浅いものは水ぶくれの下で自然に治ったりしながらおよそ2週間以内に治癒します。この場合、跡が引きくれたり硬くなったり盛り上がったりいわゆる傷跡にはなりませんが、色素沈着(皮膚が茶色くなる)や逆に色素脱出(皮膚が白くなる)が生じる場合があります。治ったあとの赤みは時間をかけて消えていきます。

 2度の深いものは皮膚の表層が壊死(えし)になってしまいますので治癒に時間がかかります。3~4週間程度かかるのがこの深い2度熱傷です。この場合、多くの場合は傷跡として残ってしまします。治療の経過で浅い2度熱傷は深い2度熱傷に移行しますので、最終的にはどれぐらいで治ったかで傷跡が残るかどうかが判断されます。

左側→太ももにお湯がかかったやけど。水ぶくれができて一部、破れてなくなっています。
真中→2週間後。やけどは治っていますが、赤みが強く残っています。(浅達性2度熱傷)
右側→治癒後9ヶ月。赤みはなくなりましたが、色素沈着が少し残っています。


3度熱傷

3度熱傷は皮膚がすべてやけどしてしまったもっとも深いやけどです。小範囲であれば1か月から数か月かかって治癒しますが、多くの場合は皮膚移植などの手術が必要になります。湯たんぽやあんか、カイロなどによるいわゆる低温やけどは多くの場合3度熱傷です。範囲が小さいので手術なしでも治りますが、数か月かかることが多くあります。いずれにしても傷跡は残ってしまいます。

左側→火がズボンに燃えてやけどに。1ヶ月経っても治らないので受診。(3度熱傷)
真中→皮膚移植の手術をしました。皮膚は効率よく移植するため網状にして移植しています。
右側→手術後9ヶ月。きれいに治っていますが、移植した皮膚との境界部の傷跡とまだら色の移植した皮膚は目立ちます。


やけどの治療は?

 やけどの多くは塗り薬や貼り薬を使って治療します。その場合、水ぶくれはどう扱うかが重要になります。水を抜くかどうかはいろいろ議論がありますが、われわれは水は抜いてその上の薄い皮膚はそのままにしていることが多くあります。

問題は水ぶくれが破れてなくなってしまっている状態です。やけどの表面が露出して乾燥してしまうとやけどの深さが進行して深くなることがあります。ですので、水はぬいても水ぶくれの薄い皮膚はもとに戻しておきます。なくなってしまった場合は、創傷被覆材という傷を覆うシート状のものを使ったり軟膏(塗り薬)で乾かないように治療します。その経過で、必要と判断されれば皮膚移植などの手術を行うこともあります。

 この場合、やけどした部分の傷跡以外に皮膚をとった部分の傷跡も残ってしまいますので手術するかどうかは慎重に考えなければなりません。やけどの傷跡は長い時間をかけてゆっくりと落ち着いていきますので、その間待つことも重要です。

 以上やけどはいったん発生してしまうといろいろと大変なことが多くあります。まずは、やけどをしないように、お湯や熱いものを扱う場合には自分自身にもまた周りの人にも十分注意して扱ってください。