心房細動に対する冷凍アブレーション
[2017年8月1日]
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心臓のカテーテル治療としては、冠動脈狭窄(きょうさく)などの細くなった、あるいは閉塞している血管を押し広げることによって、血流を改善する治療が良く知られています。
カテーテルアブレーションは血管を治療するカテーテル治療と異なり、不整脈を治療するために、心臓の筋肉内を伝わる電気伝導の異常をカテーテルで治療する、非常に難易度の高い治療です。
高度な医療技術、医学知識や経験が必要であるために、県内でクライオアブレーション治療をうけることができるのは彦根市立病院と滋賀県立成人病センターの2病院です。
(平成28年7月現在)
【心房細動とは】
心房細動は年齢とともに増加する不整脈の一つです。
心房にたくさんの電気の渦巻が生じることによって、心房が収縮できず震えている状態となります。若い人の多くが心房細動発作時は脈拍が異常に上昇しますので、動悸、息切れや胸の不快感などを自覚されます。
心房細動は年齢を重ねるとともに増加し2030年まで
患者数が増加すると考えられています。
罹患率の横軸は年齢、縦軸は%。
心房細動人口の横軸は年、縦軸の単位は千人。
65歳以上ですと、心房細動の際に心房内の血流が淀むことが原因で、心房内で血液が固まり、その血栓とよばれるものが血流に乗って、脳内の血管をふさいでしまって脳梗塞になる危険性が高くなります。
心房細動が原因で脳梗塞を起こされた患者さんとして、長嶋茂雄名誉監督、小渕元首相、田中角栄元首相、サッチャー元イギリス首相などが有名です。橋本龍太郎元首相は腸に栄養を供給する血管に血栓が詰まって亡くなられています。
脳梗塞を含めた血栓症の第一の予防は抗凝固薬内服ですが、心房細動自身を根治する治療は内科治療のカテーテルアブレーションか、胸を切り開き心臓を停止させて心房を外科的に治療するメイズ手術のみです。
【心房細動アブレーションとは】
左心房には4本の肺静脈が注いでおり、肺で酸素をもらった血液が心臓に戻ってきます。
発作性心房細動の8~9割が肺静脈起始部の心筋が原因で生じることがわかっています。
そのために肺静脈と左心房の接合部を治療するのが心房細動治療の基本です。
従来の高周波アブレーションでは、肺静脈起始部を取り囲むように、心臓の内側から1点ずつ焼灼(しょうしゃく)し 肺静脈を電気的に隔離します。
【最先端テクノロジーを駆使】
カテーテルアブレーションは最先端のハイテクノロジーを駆使して行います。
当院では3Dナビゲーションシステムといわれる装置を導入しています。患者さんの胸部に人工的なGPS空間を作り出して、コンピューターモニター上に患者さんの心臓の立体画像を精密に再構成することができます。
心臓内で電気がどのように伝導して不整脈を生じているかを解析して、カテーテルを用いてその伝導路を治療します。心臓が動いている状態で、レントゲンで見えない電気の流れを詳しく知ることができないと、治療が成功しない所が高難度治療の所以です。
高周波アブレーションでは、左心房に注ぐ4本の肺静脈の
起始部を一点一点焼灼し肺静脈の電気的隔離を行います。
クライオアブレーションでは、肺静脈の注ぎ口に直径28ミリの風船を膨らませて、風船を約マイナス40~50度程度にまで冷却します。
風船に触れている部分を凍傷にさせる治療です。
一回の治療で、各肺静脈と左心房の接合部の周囲全体を電気的隔離することができます。
想定通りに手技をすすめることができると、もう一つの方法であるカテーテル先端で心筋を50度から60度に熱す
る高周波アブレーション治療と比較して、治療時間が短縮できます。
実際、クライオアブレーション導入にて手術時間が平均4割程度短縮しています。
(1) (2) (3)
(1) 診断カテーテルを肺静脈に進める
(2) クライオアブレーション用バルーンを拡張
(3) 肺静脈を閉塞してバルーンをマイナス40~50度に冷却し、バルーンが接している肺静脈起始部の全周を一度に治療
【どの段階で治療をうけたほうがいいのでしょうか】
心房細動は発作が起こったり停止したりする発作性から、心房細動が持続する持続性あるいは慢性心房細動へと進
行します。
心房細動の持続時間が長くなるほどアブレーションの治癒率は低下します。
治癒を希望される方は、9割が治癒する発作性心房細動の時にアブレーション治療を受けられるといいでしょう。
心房細動に対してカテーテル治療を受けられた有名人には三浦雄一郎さん、吉幾三さん、益子直美さんなどがおら
れます
【患者さんの評価はどうでしょう】
看護師、臨床工学技士、放射線技師などが優しく対応してくれており、又、ボランティアの方々が病院敷地内を花いっぱいにしてくださっているおかげで、治療を受けられた患者さんから『素晴らしい病院で治療を受けられてよかった』とたびたびお褒めの手紙をいただきます。
カテーテルアブレーション治療、クライオアブレーション治療を受けられる患者さんの7割は彦根市外から来ておら
れます。遠くは東京、愛知、石川、大阪、福井、京都からも治療に来られます。
今後もみなさんのご期待に応えることができますようスタッフ一同診療にあたっていきたいと思っております。
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